「これから金利が上がるなら、借金をして不動産を買うのは危ないのでは」
いま不動産投資を検討している方の多くが、この疑問にぶつかっています。長らくゼロ金利が当たり前だった日本で、金利が「ある」世界に戻りつつあるのですから、当然の反応です。
本記事では、金利上昇局面において不動産投資をすべきかどうかを、感覚論ではなく数字で検証します。結論を先にお伝えすると、「金利上昇だけを理由にやめる判断は誤り。ただし、これまでと同じ買い方はもう通用しない」というのが本記事の立場です。
- 金利上昇だけを理由にやめる判断は誤り。金利0.25%上昇の負担増は月2,484円(借入2,000万円)、一方で東京23区の単身向け家賃は前年比13%上昇
- ただしこれまでと同じ買い方は通用しない
- 基準は「金利が2.5%になっても、この物件は成立するか」
- ここで言う成立とは、利回りの高さではなく、賃料を引き上げられるポテンシャルがあるか
- 「金利が上がるなら地方の利回り10%を買えばいい」が最も危険。家賃を上げられなければ、負担増をそのまま背負い続けることになる
なぜそう言えるのか、金利・家賃・物件価格の3側面から数字で確認していきます。
本記事はKASUUNO編集部が執筆しています。
1. いま金利はどこまで来ているのか
日本銀行は2026年9月17〜18日の金融政策決定会合で、政策金利を1.0%から1.25%へ引き上げる方針とされています。実現すれば1995年以来、約31年ぶりの水準となります。
これまでの推移を振り返ると、その速さがわかります。
| 時期 | 政策金利 |
| ~2024年3月 | マイナス金利 |
| 2024年3月 | マイナス金利解除 |
| 2025年12月 | 0.75% |
| 2026年6月 | 1.00% |
| 2026年9月 | 1.25%(予定) |
2024年3月のマイナス金利解除以降、利上げの間隔は4カ月、6カ月、11カ月、6カ月と推移してきましたが、今回は3カ月での再利上げとなり、今局面では最短の間隔です。ペースが加速しています。
今後の見通しについては、専門家の間でも見方が分かれています。
- BNPパリバ証券の河野龍太郎氏は、2026年12月に1.5%、2027年3月に1.75%まで引き上げられ、最終到達金利(ターミナルレート)は2.5%、物価動向次第ではそれ以上となるリスクもあると予想
- 一部エコノミストは、3〜4カ月ごとの利上げを前提に2027年末の政策金利を2.25〜2.5%と見込む
- 野村證券は「2026年12月、2027年6月」の利上げをメインシナリオとしつつ、より速く多い利上げのリスクシナリオも併記
- ターミナルレートを2%前後とする見方もある
助手博士、ターミナルレート2%ってどういう意味ですか?



ターミナルレートとは、景気を熱しも冷ましもしない金利水準のことじゃ。日銀が設定している政策金利は2026年現在1.25%。最終的2~2.5%まで上げるのでは?と市場では言われておるのじゃ。
2. 金利が0.25%上がると、返済額はいくら増えるのか
具体的な数字を見ます。
前提条件:借入2,000万円/35年/元利均等返済
| 借入金利 | 毎月返済額 | 年間返済額 | 金利1.5%との差(月) | 総返済額 |
| 1.5% | 61,233円 | 734,796円 | ー | 約2,572万円 |
| 1.75% | 63,717円 | 764,604円 | +2,484円 | 約2,676万円 |
| 2.0% | 66,254円 | 795,048円 | +5,021円 | 約2,783万円 |
| 2.25% | 68,847円 | 826,164円 | +7,614円 | 約2,892万円 |
| 2.5% | 71,499円 | 857,988円 | +10,266円 | 約3,003万円 |
| 3.0% | 76,969円 | 923,628円 | +15,736円 | 約3,233万円 |
※概算値。実際の返済額は金融機関の計算方法により若干異なります。
ここから読み取れることは3点あります。
- 0.25%の上昇は月2,500円程度
「0.25%の利上げ」と聞くと大きく感じますが、月次のキャッシュフローで見れば2,500円程度の話です。 - 1%の上昇で月10,000円
「金利が1%」上がると、約10,000円/月の負担増になります。年間で約12万円です。 - 総返済額では大きな差になる
金利が1%上昇すると、返済総額は35%値で430万円増加



金利が多少上昇しても月のキャッシュフローではあまり大きな差は生まれないが、長期間でみると大きな違いになっているのじゃ。
3. 一方で、家賃はいくら上がったのか
2026年3月のアットホーム調査では、全13エリア・全面積帯で募集家賃が前年同月比を上回りました。これは2015年1月の調査開始以来初めてのことです。東京23区のシングル向け(30㎡以下)は前年同月比13%の上昇を記録しています。
長谷工総合研究所によれば、2026年4月時点で東京23区のマンション賃料は過去最高を更新し、30㎡以下では23カ月連続の上昇が続いています。
金利上昇と家賃上昇を並べてみる
前提:借入2,000万円/35年/現在家賃9万円の場合
| 年間インパクト | |
| 金利0.25%上昇(1.5%→1.75%)による返済増 | ▲29,808円 |
| 家賃が5%上昇した場合の収入増(9万円→9.45万円) | +54,000円 |
| 家賃が10%上昇した場合の収入増(9万円→9.9万円) | +108,000円 |
金利0.25%の上昇によるコスト増は、家賃にして月2,500円弱、率にして約2.8%分に相当します。都心単身向けの賃料が年5〜13%のペースで上がっている現状では、家賃上昇が金利上昇を吸収している計算になります。
もちろん、これには重要な但し書きがあります。
- 家賃は退去のタイミングでしか改定できないため、上昇の反映にはタイムラグがある
- 金利上昇は変動金利であれば即座に反映される
- 家賃上昇が今後も続く保証はない
- エリアによって上昇率には大きな差がある
金利はたしかに上がっていますが、それはあくまで物価上昇ありきです。物価情報率が金利上昇率を上回っているなら、むしろ投資環境は有利担っているということですね。



金利情報だけを理由に不動産投資を辞めるのはむしろナンセンスということじゃな。
4. インフレ下で「借りて実物資産を持つ」ことの意味
金利の話に終始すると見落とされがちですが、いま起きているのは金利上昇だけではありません。インフレです。日銀が利上げを進めているのは、そもそも物価が上がっているからです。
実質金利という考え方
インフレ環境における借入コストは、名目金利だけでは測れません。
実質金利 = 名目金利 - インフレ率
仮に借入金利が2.0%、インフレ率が2.5%であれば、実質金利はマイナス0.5%です。これは、借りているお金の実質的な価値が目減りしていることを意味します。
具体的に言えば、2,000万円の借金は35年後も名目上は2,000万円から減っていった残高のままですが、その間に物価が2倍になれば、実質的な返済負担は半分になります。
家賃とローン残高の非対称性
この構造が不動産投資で効いてくるのは、以下の非対称性があるためです。
| インフレ下での動き | |
| 家賃収入 | 物価に連動して上昇しうる |
| ローン残高 | 名目で固定されている(増えない) |
| 物件価格 | 実物資産として上昇しうる |
インフレは、借入をして実物資産を保有している人に有利に働くというのが基本的なメカニズムです。現金や預金でしか資産を持っていない人は、逆に実質的な購買力を失っていきます。
不動産投資はした方が良い時代からしないとインフレに取り残される時代に入っています。
5. 金利上昇は物件価格を下げる?
これから不動産投資を始める方にとって、金利によって物件価格がどう変化するのかは気になると思います。
理論上は下落圧力がかかる
収益不動産の価格は、基本的に以下の式で説明されます。
物件価格 = 年間純収益(NOI) ÷ 期待利回り(キャップレート)
金利が上がれば投資家が求める利回りも上がり、分母が大きくなるため価格は下がります。またローンを組める金額には年収による上限があるため、金利が占める割合が増えれば物件価格に充てられるローン枠は目減りします。



金利が上がると物件価格が下る、金利が下がると物件価格が上がるということですね。



その通りじゃ。じゃが現実はそう単純ではない。金利が上がるということはインフレ、つまり賃金上昇や家賃上昇も同時に起きるために物件価格は単純には下がらないのじゃ。
一方でインフレにより賃金上昇、家賃上昇が起きている
インフレ化では、投資家自身の年収アップ、収益不動産の家賃アップによって上述した下落圧力が打ち消されます。
そのため、単純に「金利が上がる=価格が下がる」とは言えないのが実情です。
デフレ期ではどの物件も家賃が上がりませんでしたので、物件選定による差は生まれませんでした。しかし、これからは家賃が上がる物件のみが価格が上がっていくインフレ期に突入しています。物件選定による不動産投資の成否の差が開いてきています。
6. 結論:判断基準は「金利の水準」ではなく「金利への耐性」
金利が上がるから買わない、下がるから買う、という判断軸は的を外しています。金利の先行きは誰にも正確には読めず、専門家の予想でも2%から2.5%超まで幅があるのが現状です。
代わりに持つべき基準は、「金利が2.5%になっても、この物件は成立するか」という問いです。
これは十分な利回りがある物件と言う意味ではなく、インフレに伴って賃料を引き上げられるポテンシャルがある物件を選ぶと言う意味です。
金利が2.5%まで上がるなら地方の利回り10%の物件を買えば良い、と言う発想が一番危険です。
詳しくは下記記事をご覧ください。


インフレと金利上昇が同時に進む局面は、日本の多くの投資家にとって初めての経験です。だからこそ、楽観論にも悲観論にも寄りかからず、自分の物件の数字で判断する姿勢が何より重要になります
【出典】
- 日本銀行 金融政策決定会合関連資料
- ダイヤモンド・オンライン(BNPパリバ証券 河野龍太郎氏)、野村證券レポート等
- アットホーム「全国主要都市の『賃貸マンション・アパート』募集家賃動向」
- 長谷工総合研究所「上昇を続ける東京23区賃貸住宅市場の行方」(2026年8月)


